近年では昔ながらのシリコン素材の 太陽電池 の質は向上してきていますが、いかんせん発電効率限界値33%の壁を超えることは理論上不可能です。物理学上、太陽電池は一定基準以下のエネルギーの太陽光を吸収することが出来ず、その分のエネルギーは無駄になって電気に変えることが出来ないのです。ところが、この低エネルギーの赤色光子を二つ合わせて高エネルギーの黄色光子を作り出す方法がシドニー大学において発見されました。
「光化学上方変換」と呼ばれるこの変換方法は、現在は単一P-N結晶体シリコン製の太陽電池では実行できないような光スペクトラムを採種することが可能で、これによって記録的発電効率40%が期待できます。具体的には太陽電池内に配置された二種類の特殊分子によって二つの低エネルギー光子を一つの高エネルギー光子に変換するもので、低エネルギーの赤色光子は一つ目の分子内に逃げないようにしっかりと閉じ込められることになります。
このように光子が閉じ込められた状態の分子は、もう一方の有機分子に溶液と通して接触し、一方の分子の エネルギー 量は上昇する一方で他方は元の状態に戻るというしくみです。このようにして太陽電池に強いエネルギーが吸収された場合には、この高エネルギーの黄色光子は分子内にとどまり続けることなくすばやく送り出されることになります。