はじめに
別名MDFともいう合成繊維は建築木材の代用品として利用されます。やわらかい木と硬い木を繊維状になるまで細かくし、ワックスと樹脂を混ぜて加工することで作られ、その後、高温で圧縮されてMDFパネル型に加工されるというわけです。1980年代に実用化が始まり、その強度の高さ・コストパフォーマンスの良さのために建築材としてだけでなく、キャビネット類や収納棚の木材代わりとしても現在まで長期間にわたって使用され続けています。このように多くの長所を持ち、従来の木材に代わる新しい建築木材として活躍するMDFですが、ここではMDF使用の際のデメリットもあげていきながら総合的に検証していきたいと思います。
MDFのつくり
MDFはその製造過程の特徴からくる実用性の高さが際立ちます。例として、自然の木材には色の種類によっては塗装の難しいものもありますが、MDFは種類を問わず全色塗装が可能です。水性・油性・ニスなどがすべて使用できるため、塗装費用を押さえて簡単に作業を進めることも出来ます。これは主にMDF独自の分子構造によるものです。その一方で、MDF製作過程で大量に使用される接着剤のために切断加工が比較的難しく、作業道具がダメージを受けることもしばしばです。
品質
MDFはどうしても、自然の木材の持つ暖かみのある見た目の美しさにかけてしまいます。しかしながら自然の木には付き物の「節」や「コブ」によって作業に支障が出るようなことがなく全体的にスムースに仕事がはかどるのも事実です。またラミネート加工によって見た目を補正することも可能です。しかし、MDFの大きなマイナス面といえば健康への悪影響でしょう。MDF内にある有害ホムルアルデビドが、切断加工作業をすることで放出されて肺や目にダメージを与えてしまうのです。アメリカEPAは1987年の時点で、MDF製作に利用されるこの有害尿素ホムルアルデビドを「発がん性物質の可能性有り」と警告しています。したがって、作業員は必ずマスクなどのプロテクターを着用する必要があります。
耐久性
MDFは化学薬品を用いて作られているため、シロアリを寄せ付けません。この点においては自然の木材に勝るメリットでしょう(注・チーク材やゴムの木はシロアリを寄せ付けない性質を持っています)。しかしMDF最大の弱点といえば「耐水性の低さ」です。湿気や水分くらいでしたら問題ないのですが、水に浸された際には膨れ上がり曲がってしまうため、チーク材やゴムの木の方が相対的には優れているということになります。
使用・メンテナンス
MDFの使用はとても簡単です。接着剤を使う際も、天然木と違って平らな表面同士しっかりとくっついてくれます。したがって、作業をする際には大変便利なMDFですがメンテナンスは大変です。一度傷付いてしまうと修復は出来ませんし、引っかき傷程度でも劣化しやすいMDFの中心部の素材がみえてしまうのです。こうなってしまうと、その部分は捨てて新しいものを使ってやり直すよりほかありません。
値段
MDFの長所は低コストにあります。たくさんの種類の木を使って化学調合するために大量生産が可能なのです。生産過程も簡単なため、労働コストも削減できます。しかし「コスト」についてもう少し大きな視野で見てみると、MDFは実は安上がりであるとは言いきれないことが分かります。経済的な面では、定期的に行う必要のあるメンテナンスと取り換え交換は高くつきますし、環境面ではゴムの木などを使った方がエコ的です。なぜならゴムの木はゴムの採種が済んで植え替えをされる段階の、どのみち切り倒されてしまう状態の木を使用するためです。
エコフレンドリー指数
MDFはリサイクル木材からできているという点ではエコフレンドリーといえるでしょう。しかし、製造段階で多量の化学薬品が用いられることはエコフレンドリーからは程遠いのも事実です。前述した有害尿素ホムルアルデビドは呼吸器系・消化器系に害をもたらします。特に赤ちゃんのいる家庭では、なめたり噛んだりしてしまわないようにMDF材に近づけないようにすることが必須です。
結論
MDFは家屋建築にとても便利な素材であるのは確かです。しかし、完全エコフレンドリーホームを目指すのであれば、健康への影響・コスト・耐久性の面からお勧めしません。それでも、子供が触れることのない場所に部分的に使用するのにはこれ以上のものはないでしょう。