ニューヨークのアルバニー大学の研究チームによると、風力発電施設によって地上温度の明らかな上昇が見られることがわかりました。このチームはアメリカ国内でも4大風力発電施設を抱える西テキサスのノーラン、テイラーの各地域の気象データを観測したところ、2001年から2011年までの10年間に、風力発電施設のないエリアに比べて夜間の地上温度が0.72度上昇したということが分かりました。地球温暖化現象による温度上昇は10年間で0.2度といわれていますから、その4倍以上の温度上昇がみられる今回の測定結果は風力発電の発展を根底から揺るがしかねない一大事なのです。
結論付けには更なる研究を要する
このアルバニー大学の研究チームを含めた科学者グループは、今回の結論を決定付けるには更なる研究が必要だとしています。なによりアメリカ国内、世界のその他の風力発電施設でのデータも参照することが必要ですし、局地的な温暖化と地球規模での温暖化現象を簡単には比較することもできないのです。
では、今回の温暖化現象の原因はどのような物があるのでしょうか、2つ挙げてみたいと思います。一つ目は風車タービンからの熱と関連電子機器やスイッチから放出された熱、その他には風車が起こす風の流れによって暖かい空気が地上部に押し下げられて地上レベルでの温度低下を遅らせたことに起因するというものです。この説が正しいとすると、上方大気の方が温度の低い日中ではタービン周辺エリアは周辺より温度が低くなるということになります。しかし、今回の研究では違いは見られませんでした。
なぜ地上の温度が上昇することが問題なのか
再生利用発電方法のなかでも風力発電の特徴としては、施設周辺で農業を同時に営むことができるという点にあります。例えばテキサスでは農家が風車一つごとに3000ドルから5000ドルで土地を貸すと同時に風車の周辺で農作物を栽培し続けています。
テキサスにおける農業の生産総額は800億ドルにものぼり、風力発電のもたらす生産高の数倍にも当たるため、もし地上の温度上昇が農作物に悪影響を及ぼすようなことがあれば農家としては早急に風力発電施設の使用の取りやめの要求に動くことになるでしょう。
世界を見てみても、2011年の発電規模は前年比21%増の238ギガワットまで上昇を続けています。なかでもアメリカは47ギガワットを発電しトップに位置し、テキサス州は国内最大の10.3ギガワットを発電しています。したがって、農業に及ぼす弊害が確認されることでこの再生利用エネルギーの問題が世界経済にもたらす影響は少なくありません。
風力発電に反対する一部のグループは、巨大風車が昆虫や鳥を遠ざけることで花粉の受粉システムのバランスを崩すことや、長期的な視野で風車の騒音が人体に引き起こす影響などを指摘しています。したがって今回の一件がこのような反対派の活動を再燃させる可能性がありますが、該当データの更なる分析が今は待たれるところです。