なぜいまこの問題なのか?
常温核融合の課題、そして実用性が語られるようになってしばらくが経ちました。スタンリー・ポンズ(Stanley Pons)とマーティン・フライシュマン(Martin Fleischmann)の二人が発表した、研究室の科学装置で記録したその過程の記録により実証されたのです。しかしその後間もなくして他の研究者により、ポンズとフライシュマンの実験は、エネルギー生産の革新的手段ではなく、そのデータと実験過程に謝った解釈があることが証明されたのです。最近日本で起こった災害、そして福島原子力発電所の事故は、現在の核分裂ベースの原子炉の本当の危険を改めて世界に突きつけました。私たちはどうするべきなのでしょうか?
現状の深刻さ
原子炉は日常的に地球規模で廃棄物を生み出します。国際原子力機関(IAEA)によると、現在世界31カ国に439の原子炉が存在しています。しかしこれらの原子炉につきまとう安全性の問題は日々深刻化しています。 科学の力で安全性を向上させ、いわゆる”誰にでも扱える”メカニズムにするべく努力してはいても、何十年もたった現在でも、いまだそれは叶えられていません。80~90年代に世界を震撼させたチェルノブイリの惨事により核分裂反応炉のチェックが行われましたが、最近発生した福島原発の事故により、原子炉の安全に保証は決してないという事実があらためて気づかされることになったのです。
国際原子力事象評価尺度による「レベル7」と認定された事故は今までに2件のみですが、その規模には至らないものの、核物質の拡散事例は他にも発生しています。世界中で使用される電気の13~14%は原子力発電で発電されている今日、私たちは本当にチェルノブイリのような原子炉を手放すことができるのでしょうか?これが常温核融合が登場した背景です。
通常の核融合は非常な高温下で発生しますが、常温核融合は、室温またはそれに近い状況で発生します。 これらの実験の大半は、パラジウムを使ったものや、重水(重水素/ジュウテリウム)を使った発熱反応の能力を試すものでした。いずれも未だ、常温核融合の成功を約束する結果を残せてはいませんが、この方法での発電を想定して設計したデザイナーたちを見てみることにしましょう
常温核融合に依存する新しい手法
Torusデザインのコンセプト・ホーム
低エネルギー核反応(LENR /初期のアイディアは実行不可能と見なされたため、この名前は過去10年ほどにわたり常温核融合によるものであると考えられてきた)の利点を生かして設計されたこのコンセプト・ホームは、常温核融合システムにより電源を供給します。温室や地下シェルターのほか、どの家にもある設備を備えています。違うことは、常温核融合により発電された電気を使用しているという点だけです。
E-Cat 常温核融合発電所
アンドレア・ロッシ氏(Andrea Rossi)は、常温核融合が実現可能で信頼のおける電源であり、今後数年の間に家の電力供給源となりうることを証明しようとしています。彼は既に、理論上は5時間で470kWを発電することができるE-Catという常温核融合発電所を作りました。この発電所には継続的・持続的に発電が行えないという問題がありますが、大きな第一歩となると言えるでしょう。
あなたの家を暖めるE-Catエンジン
これもアンドレア・ロッシによるものです。彼はこのエンジンとその技術の特許申請を行いましたが、裏付けとなる妥当な科学的検証や実験結果が不足しているとして却下されました。はたしてこのE-Catが機能するのか、そしてロッシ氏が本当に常温核融合に成功したのか、それとも全くの嘘なのか、確かなことは何も分かっていません。
この先にあるハードル、そして可能性
まず最初に挙げられる常温核融合におけるハードルは大変シンプル、すなわち科学的正当性です。科学の中核原理試験は再現性です。同じ条件下、同じ材料で毎回同一の結果が得られなければなりません。常温核融合はまだこの結果を得られておらず、散発的に1~2度同一の結果が得られても、技術が確立されたとは見なされません。常温核融合に関する特定の学説は、論理上の穴を埋めることに悩まされています。持続的で管理された発電は、また別の問題です。
こうしたハードルを乗り越え、常温核融合が行えるようになれば、炭素排出も放射性廃棄物もない未来に向かうことができるでしょう。私たちはアンドレア・ロッシのような人物が正しく、そして常温核融合が今後何十年かの間に実現することを心から願っています。