進行中の生物の多様性の保護と、農業を通じて地球を滋養することとの間での衝突は、おそらく環境保全のために直面している問題では一番複雑なものです。 そしてこのことが、小さなスケールの農業においての、環境にやさしい農業の進化の背景にあります。 環境にやさしい農業は、殺虫剤、成長調整剤、飼料の安定剤、除草剤、遺伝子組み換えされたものや化学肥料といった、科学的なものを使わない、農業への別の決定的なアプローチです。環境にやさしい農業をする農家は、完全に農作物の残留物、機械栽培、厩肥、輪作に頼って、土壌の生産性、雑草のコントロール、害虫対策や作物の養分を維持しています。
地球の温室効果ガスは、その全体の12%が農業に由来するといわれ、農業にかかるコストのたった6%から9%がエネルギーに関連したコストだといわれています。再生可能エネルギーを、農作物の栽培に利用するということは、環境面、経済面どちらにも恩恵をもたらします。既成のエネルギーにとって代わって、 世界中の多くの農場が、たくさんの敷地内の再生可能エネルギーを利用しています。こういった農場はすべて、再生エネルギーと、食物生産の実験場といえます。微生物の吸着から、太陽光エネルギーまで、再生可能エネルギーは農業の展望の転換期に、大きな貢献をしているのです。
光合成、風力発電か農業か
広々とした土地と遠隔地での太陽光発電のための必須条件を満たせば、太陽光エネルギーは農場において非常に適した代替手段です。アメリカ合衆国では、USDA(アメリカ合衆国農務省)のREAプログラムが、農場での数多くの太陽光プロジェクトに資金を提供しています。USDAによって示されている統計によると、このプログラムは2007年から2009年の間の2年間で、5倍になったといいます。発電装置の設置は食物生産に素晴らしい役割を果たし、使われていない水源にも役立ちます。カルフォルニア州オークランドの “Far Nienteワイナリー”では、1エーカー超の中水道(排水を、人体に直接接しない目的で循環利用する)のため池に400キロワットのシステムパネルのおよそ半分が浮いていて、エネルギーを生成するために必要な土地の節約に一役買っています。
アメリカ合衆国では、風力エネルギーは希望する結果をもたらす可能性があるものとして、注目が高まっています。州のほとんどが、見事な風力エネルギーの取り組みを実施。ノースダコタ、カンザス、テキサス州を入れた、ほぼ3つの州では、国全体の明かりをともすことができるほど十分な風があります。今現在、アメリカ合衆国では、風力発電で50GWの発電を目標にしています。 アメリカの風力発電業界の今の能力は、国中の1300万世帯の明かりをともすのに十分な電力を供給できるくらいあります。電力の供給は主に、広範囲に広げられた農場からのもの。これは、農場にとっても重要な資源であるからです。風力発電機の一番いいところは、作物のすぐ隣や、家畜がいる場所のすぐ近くにでも、簡単に設置できること。これらのタービンは、農場で使われる電力を十分まかなうことができ、さらにはグリッドに供給するのにも十分あります。
十分なエネルギー供給のための廃棄物の利用する
今日では、農業廃棄物や、ごみは、バイオガスに変えられ、それはさらにエネルギー源として使うことができます。バイオガスは主に濃いメタンガスで、天然ガスにエネルギーを与える化合物であり、タービンで天然ガスを作り出すために使われます。 チーズのホエーや、米のもみ殻などの原料も、電気を生成するのに使われます。 嫌気性消化装置の幅広い使用も、動物の排泄物からバイオガスを作り出すのに人気となってきています。電力を作り出す他に、 こうした廃棄物は微生物によって肥料に変えられます。
農場で再生可能エネルギーを使用するということは、完全に環境を守り、エネルギーのコストを最小限に抑えているというわけではありません。発展途上国は、貧困を軽減し、食料を確保し、地域の経済の活性化にとこうした再生可能エネルギーを農業に使っています。“Powering Agriculture” という、アメリカが資金提供をしているプログラムは、農場に再生可能エネルギーを使うことを推進し、資金提供をしています。国連の概算によれば、世界の人口に食べ物を与えるには、同じ農地に農作物を少なくともあと70%増やして育てなければならないそうです。 これを実現するのに、Powering Agricultureプログラムは、農作物の増産ができるようにきれいなエネルギーの確保の解決策を出すということに専心しています。