なぜ今「ヘリウム3」なのでしょう？
私たちに必要なのはエネルギー需要に見合う、よりクリーンで安全で、より豊富なエネルギー源です。私たちは石炭や石油といった非再生可能エネルギー源に依存してきましたが、それらは現在完全に枯渇する危機に瀕しており、より信頼性が高く大気に影響を与えない代替エネルギー源が求められています。代替エネルギー源を我々は持っているのでしょうか？科学者や環境問題専門家たちが、この問題の解決策となる、より環境に優しい代替エネルギー源を見つけることに取り組んできましたが、全てのエネルギー需要を満たすことができる完璧な物質や技術は現在のところ、地球上で発見されていません。そしてその解決策は、地球外にありました。「ヘリウム3」と呼ばれるこの物質は太陽の核融合反応によって放出される太陽風を介して月面に堆積されています。ヘリウム3は非常に強力な物質で、わずか40メートルトンでアメリカ全土の1年間のエネルギー需要を賄うことができます。この物質は数十億年に渡って月面に堆積しており、大変豊富に（およそ100万トン）存在しています。
実用可能なのでしょうか？
ヘリウム3は、非放射性の水素である稀な同位体で、惑星全体で動力源にできる唯一の物質です。ロシアも月からのヘリウム抽出を検討していますが、実際のアクションはまだ起こされていません。月周回衛星「Chang’e-2」を打ち上げた中国は月の研究を進めており、必要なデータ収集に取り組んでいます。放出されるガスの温度は700℃で、冷やされると他の気体がヘリウム3同位体を残して凝縮します。
開発状況
1.ヘリウム3掘削には負の側面もある
ヘリウム3が地球で役に立つことは明らかです。この物質は地球におけるエネルギーのあり方を完全に変えるでしょう。しかし、良いことには必ず負の側面もあるものです。簡単に説明すると、地球における潮の満ち引きやその他様々な現象は月の影響を大きく受けています。月の公転により地球上の様々な機能が適切に行われているのです。月面から大量の物質を掘削することにより、自然のバランスが崩れ、災害を引き起こすかもしれません。また掘削に使う爆発物により、月面は完全に破壊されます。金銭的な利益は莫大ですが、先に進む前に多くの研究がなされなければなりません。
2. アポロ号乗組員で地質学者、上院議員のハリソン・シュミット氏による、地球上のエネルギー危機解決のためのアイディア
元宇宙飛行士で地質学者であり、上院議員も務めたハリソン・シュミット氏は、月面からのヘリウム3抽出計画のためのアイディアを進めています。彼のアイディアは、月に月面基地を作り、そこでこの物質抽出して地球に送るプロジェクトの開発です。このプロジェクトには150億ドルの資金と多くの研究が必要とされます。まずは掘削基地と計画の枠組みにそれぞれ25億ドル、ヘリウム3の融合プラントと月への定期的な飛行を行うためのロケットリフトにそれぞれ50億ドルが必要です。資金の問題の他に、関連リスクも考慮しなければなりません。しかしこのプロジェクトがいったんスタートすれば、直ちに必要な経費をプロジェクト自らでまかなえるようになることは間違いありません。エネルギーは何千億ドルもの価値があるのです。
3. 中国の「Chang’e-2 」がヘリウム3抽出に一歩近づく未知の領域を調査する
中国は既に彼らの2回目の宇宙探査機を打ち上げており、宇宙大国として宇宙空間に大量に存在する資源を発見・利用するための試みを始めています。「Chang’e-2」は、着陸データに関する重要な情報を収集することを目的として打ち上げられました。経済効果はこの国の関心を月に向かわせており、月面基地を作りヘリウム3同位体を抽出することは中国だけでなく、ロシアや他の主要な宇宙大国にとって究極の目標です。
主なハードル
工学分野に興味を持つ学生が少ないことが、ヘリウム3抽出開発の遅れの一因です。NASAとDOE（エネルギー省）がうまく連携していないことも原因と考えられます。伴うリスクも計算される必要があり、調査データは、考える前に決定的なプロジェクトにならなければならず、エラーを起こす余裕はないのです。
何ができるのか？
抽出した後、月から地球に送られたヘリウム3は地球上にたった一つしかない融合炉でエネルギーを抽出します。この融合炉があるのはこのプロジェクトに20年に渡って取り組んでいるKulcinski教授の研究室です。掘削・抽出のための大規模プロジェクトには、何年もかかるでしょう。また地球上に高出力のヘリウム３融合炉を作る国際プロジェクトも必要です。今はまだ夢でしかないこの技術を確立するためには、多くの努力と献身が必要なのです。